【完】冷徹仮面王子と姫。
 嘲るような目で、あたしを見る。纏う雰囲気は、怖い。



「あんたが悪いんだよ。大して可愛くもないくせに、王子に近づいたりするから」



 この言葉に始まり、殴られる、殴られる。目に付かないところばかりを狙われる辺り、彼女たちは慣れているのだろうか。


 肩、二の腕、背中。靴下で隠れる足に、お腹。


 痛かった。そして何より、疑問に思った。これで彼女達の気は、済むの?



 声だけは噛み殺す。悔しいから。弱さを見せたく、なかったから。


 逃げる隙はないかと考えたけれど、六人が相手では逃げるどころか手も足も出ない。


 あたしは殆ど無抵抗だった。


 持って来たよー、そう聞こえたままに目にしたのは、……水を張った、バケツ。



「ほら!これで頭冷やしなっ」



 ……全身が寒気を感じる。
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