【完】冷徹仮面王子と姫。
 意味が、伝わってしまったのだと。何があったのか、大体伝わってしまったのだと悟る。



 ……あーちゃんにも、止められた。そうだと、思う。もっともだ。


 だけど、それでは片付けられないあたしの気持ちがある。



「でもあたし…氷室君の“彼女”……でしょ?」



 確認するような言い方の自分が悲しい。どこか自信を持てていないような。




「だから、尚更…行かなきゃ……」



 最後の方は、自分でも聞きとれない程の掠れ具合。


 自信が持てなかったせいで、消え入る言葉の数々。


 代わりに出てきた涙のしずくが床へ零れ落ち…小さな小さな水溜まりをつくる。



「……分かったから。泣くなって」


「そっそんなこと言われても…」



 嗚咽と共に身体が上下し、しゃくりあげる。


 いくら弱いところを晒そうと、泣き姿だけは見せたくなかったところがあるのに。



「あたしは…っいつも不安で……っ」



 ついでと言わんばかりに吐き出す、本音。言葉の輪郭がはっきりしていないことなんて、この際気にしない。



「……え?」



「本当にあたしが…っ氷室君の彼女なのかって。あたしでいいのかって不安だったの…」


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