僕に舞い降りた天使
前に進むために
俺と沙希は家に帰る途中ずっと無言だった。
なんていうか…
言葉は必要なかった。
繋いだ手から伝わる熱が言葉の代わりに2人の間で行き来してるみたいだ…。
3年前に忘れた人のぬくもり。
沙希の体温さえも愛おしい。
また思い出せた暖かい気持ちに、涙が出そうになる。
これが海が俺に残したもの。
ずっと忘れていた感情。
これからは大切にしたいんだ。
「父さんと母さんになんて言ってきたんだ?」
「裕也君に頼んで裕也君の家に泊まってることになってるよ」
「そっか。俺…家族に全部話すよ。俺が荒れた理由とか話したことなかったんだ」
「そうなんだ…」
「海のこともちゃんと話す。それで思い出にする。前に進むよ」
「……うん!」
「………」
気のせいならいい。
気のせいであってほしい。
この時の沙希の笑顔が少し寂しそうに見えた。