僕に舞い降りた天使


ちゃんと女と付き合ったことなんか1回だけだしなぁ…。


それに”あいつ”は俺の前では涙なんか見せなかった。


初めて泣き顔を見たのは…


3年前のあの日だけ。


あ-やべぇ…。


俺も泣きそうになってきた。


思いださないようにしてたのに。


特に…こいつの前では。





少しだけ落ち着いた様子の沙希。


「なんかあったのか?」


こーゆーのは得意ではない。


人を励ますとか慰めるとか。


「ごめんね、なんでもないよ…」


「なんでもないなら泣かねぇだろ」


「……」


「泣きたくなるようなことがあったんだろ?」


「……」


「まぁ、言いたくないなら聞かない。でも、泣きたくなったらいつでも俺を呼べ」


「え…?」


「そばにいることくらいはできるから」


「…うん」


俺はそうだった。


泣きたいとき、誰かがそばにいてくれるとそれだけで安心した。






だけど…それから沙希は俺に涙を見せなかった。


あの時までは。






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