カレの弟
ドンッ

スレスレのところで我に返ったわたしは、流伊くんを突き飛ばした。


「フッ。凪ちゃんかわい~。」

どこか小馬鹿にしたように笑う彼を、わたしは睨み、


「あなた…何がしたいの?わたしが何をしたっていうのよ…。」


「…さあ?」


「もう…なんなのよ…亮司もあなたも良く分からないっ…。」


泣きそうになりながら言うと、流伊くんは再びわたしの前に立ち、わたしの顎を掴むと乱暴に上を向かせた。

視線を合わせると、綺麗な笑顔を作り


「あんたのことめちゃくちゃにしたいんだ。」


そう言うと、部屋をでて行こうとしたが何かを思い出したのかドアノブに手を添えたところで振り向き、無表情で

「俺甘い卵焼き、嫌いなんだよね。」


それだけ言い放つと部屋を出ていった。


わたしは、残りひとつになった亮司が大好きな甘い卵焼きをただ見つめていた。



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