いっぺん死んでみる?~スケベの季節~
男のロマン
「……あなた、って。
実は、莫迦ね?」
そう、七条 晴香(しちじょう はるか)に切って捨てられ。
八ツ橋 守(やつはし まもる)は、ぷうと頬を膨らませた。
「僕のどこが、莫迦だって言うのさ!」
一応、ハンサム、とは言えなくもないが。
もう三十にも手の届く、オジサンと言われても文句の言えない年の上。
文部科学省の官僚なんぞという。
世間一般から見れば、とんでもなくエリートコースを走っているのにもかかわらず。
頬を膨らませ、怒っている守の言動は、とても子供っぽい。
普段は、年相応の堅い口調で。
慇懃無礼と言われてもおかしくない口調でしゃべるのに。
でも実は。
こんなしゃべり方が守の地なんだ、と。
特に、自分に甘えているときは、こんな感じになると。
暗黙の了解をしている恋人の晴香は、守の全く気にせず、ふん、と鼻を鳴らした。