【完】アップルパイ。~天国ノ君へ~
その日の夢には久しぶりに拓海が出てきた
拓海が死んでしまって5年。
あたしはその5年間拓海の夢を見たことはなかった
夢の中の拓海は5年前とちっとも変わっていなくて
あたしだけが成長していた
それが凄く…悲しかった
「愛…」
久しぶりに聞く拓海の声はあたしの胸を締め付けた
あたしは声が出したくても出せなかった
ただ、あたしの目からは大粒の涙がこぼれ落ちた
「私はあなたの幸せを誰よりも願っています」
そういった瞬間拓海はあたしの目の前から消えていった
それと同時にあたしは目を覚ました
隣には愛しい心愛の姿
「“あなたの幸せを誰よりも願っている”か…」
あたしはそう呟くとベッドから起き上がった
あたしは勢いよくカーテンを開けた
「ん…ママ?」
日が出たと同時に心愛が目を覚ました