どくんどくん ~SPRING SNOW~
第11章~図書館での秘密のキス~
まだ高校生の僕らは、何かイケナイ事をしたような気分だった。

同級生の中には、もう経験したヤツもいるんだけど。

男の僕でも少し後ろめたい気持ちになるのだから、ユキはもっと複雑かもしれない。


昨日は、僕はお母さんの目を見れなかった。


僕は、もうユキに対する気持ちが大きすぎるくらいに大きくなってることに気付いた。

ユキが今、家で泣いているかもしれない。

そう思うと、いてもたってもいられない気持ちになる。

まだ高校生の僕だけど、ユキをさらって行ってしまいたいと思う。


少し大人だったら・・・僕がユキを守れるのに。


でも、わかってるんだ。


どこへ連れて行っても、ユキが心から幸せにはなれないって。


お父さんと離れたいと思っているわけじゃないから。

ユキは、お父さんと親子としての時間を過ごしたいと願ってる。


僕が連れ去ったとしても、どうにもならないことなのだ。

僕がユキの手を引っ張ってどこか遠くに行ったとしても、ユキの心は置いてけぼりだ。

僕が、お父さんにお酒をやめてくださいとお願いしたとしても、無駄なんだ。


僕にできることは何もない。

僕たちは子供過ぎる。


まだ、自分の力じゃなんにもできない子供。

早く大人になろうと必死でもがいても、時間は一定の速さでしか過ぎはしない。

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