どくんどくん ~SPRING SNOW~
僕らは、すごく近づいた。ほんの何時間かで、ぐっと近づいた。

ただ、一方的に想ってるだけの恋はもうおしまい。

ここからだ、ハル!

カレーに例えるなら、今やっと玉ねぎをみじん切りしている時だ。

ここから、僕の恋がどう美味しくできあがるか。

その日の夜は、春瀬さんのハニカミ笑顔を抱いて眠った。

夢の中で、彼女は泣いていた。



珍しく目覚まし時計より早く目覚めた。

昨日の春瀬さんとの会話を何度も何度も頭の中で繰り返している僕は、もう彼女のこと以外頭には、なかった。

昨夜見た夢のことが忘れられない。


運動場を見ながら一人泣いていた春瀬さん。

またもや僕はこっそり見つめていた。いつもいつも見てるだけの僕。

昨日、涙を流してるのを見たからだろうか。

本当にコンタクトがずれたのか、という疑問にはもう答えが出ていた。


出会ってからの記憶を辿る。



2回目の授業の時、春瀬さんは一瞬だけ黒板の字を見ようとメガネをかけていた。

もし、コンタクトだとしたらメガネをかけるか?

その日はたまたまコンタクトではなかったとしたら?
でも、それならずっとメガネをかけてるはずだ。

彼女の瞳のあの輝きはコンタクトではない。

コンタクトがずれて出る涙と、心の中から出てくる涙の違いはわかる。

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