どくんどくん ~SPRING SNOW~
ケーキ屋に到着した僕らは、ぎこちなく目を合わせた。


風で、前髪が乱れてる。
最高にかわいかった。初めて見るユキのおでこは真っ白ですべすべだった。


「おでこ丸出し~!」

僕は、触りたい衝動のままに、ユキのおでこにツンってタッチした。

「きゃ。もう~!!バカ!!もう・・・。ね~、ハルって手があったかいね。」

ささいな一言一言が僕の脳ミソフロッピに上書きされていく。

世界中の人々がこんな気持ちを経験しているのだろうか。

初恋というのはこういうものなのだろうか。

初恋でなくても、本当の恋をするとこんなに感情が豊かになるものなのか。

僕は、生きているという実感をものすごく感じていた。



「どれもこれも美味しそうで迷っちゃう~!!」

女の子らしく、ケーキに目がないようだ。

「好きなの2つ頼んでいいよ!半分こしようよ。」


優しいように聞こえるけど、実は間接キスを期待してる僕・・・。

「いいの??どれにしよっか。一つは、いちごタルトで・・・ねえ、ハルはどれがいい?」

上目遣いで僕を見る。

僕の心は叫んだ。


『君がいい』って。

いや、ユキを食べたいって意味じゃなく・・


何よりも君が好きだってこと。
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