どくんどくん ~SPRING SNOW~
今日は土曜日。

またもや、ケータイ番号もメルアドも聞くのを忘れた。

この土日、ユキの声も聞けないなんて、この盛り上がった気持ちをどうすればいいのだろうか。

ドラマで言うなら、今が一番の幸せ絶頂じゃないか。

こっそり、家に行ってみようかという計画が、僕の頭の中でだけどんどん進んでいった。

シン達とのサッカーの試合の後、僕はユキに会いに行くことを決めた。

今の時間は戻ってこない。

この幸せな気持ちを今いっぱい味わっておく必要がある。



案の定、僕とユキとのことはサッカー仲間みんなが知っていた。

「おい~、シン!!口軽いよ~。せっかく僕のAV全部お前にあげようと思ってたけど、あ~げない。」

「まじで~~~~??ほんとに俺が悪かった。頼む!ちょうだい、ハル君。」

僕とシンとの会話を聞いてみんなが笑ってる。

「ここで僕から報告!昨日、彼女ができました。なので、もう僕宛のラブレターは受け取らないでください。」

みんなの羨ましそうな視線が僕に突き刺さる。

一瞬の沈黙の後、シンが言う。


「なので~、これからはH本や、HなDVDなどもハル君には回さないでください。」

困った僕の顔を見て、みんなが笑う。

ほのぼのとした土曜の午後。

いつもより、もっと幸せなのは、彼女ができたせいだけじゃない。

ユキのおかげで、みんなの笑顔も愛しくみえる。

仲間の大切さや、友情の素晴らしさをつくづく感じる。

この仲間達は、昔からの僕を知っていて、僕の今までの恋愛も知ってるんだ。

僕のだめな所も知ってる。


好きでもない女の子に告白されて付き合って、結局大事にできずに傷付けた。

あの時、「まあ、長い人生いろいろあるよ。」と言ってくれたみんな。

毎日汗かいて、ボールを追いかけた僕らの青春。

みんなの心に焼き付いているあの風景、あの涙、あの友情・・・。


ちょっとしんみりな今日の僕。

< 44 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop