キボウタクシー
甘い思い出と苦い思い出が心の中でブレンドされて、弾ける。

気づけば私の頬に一筋の雫が流れて、その道筋に跡を残した。

その後に続くかたちで、また1つ、また1つと涙が溢れて、ついには止まらなくなる。

私は歩きながら嗚咽を上げ始めてしまう。


「あっ、ごめん。言いたくなかったら言わなくていいから」


恭子が必死にフォローするも、一度流れ始めたものは止まってはくれない。

私はしばらくの間、泣き続けた。



私は一週間ほど前に、3年間付き合ってきた彼氏に振られた。

憂鬱の主な原因はこれだ。

私は彼を運命の人だと思い続けていたし、彼も私を愛してくれていた。

いた、なんて過去形を使いたくはないけれど。


大学で出会った彼。

最初は全く意識していなかったのに、いつからだろう、惹かれていた。

頭がいいくせに運動も出来て、人見知りのくせに面白くて、不器用なくせに努力家だった。

その全てが輝いているように見えた私の愛は深く、彼といる時間は本当に夢のようだった。

映画を見たり、買い物したり、ふざけあったり。

何もしなくても、そばにいるだけで温かい。

私はもちろん彼と結婚するんだとばかり思っていた。
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