暗黒時代
恩は、おろおろと一輝の方を見ていた。
沙華は、何をやるのだろう、という興味本位で一輝を見ているのが、視線で一輝に伝わってくる。

教室に、数分の険悪なムードが漂っていた中、ドアが軋みながら開く音が響いた。

「嫌なら、帰ってもいいんですよ」

ドアを開いた者に、全員が注目した。
――藤原だ。
腕を組み、軽くドアに体重を傾け、傍から見ると気取っているような様子に見えた。

「先生、何言ってるんですか!」
「文句があるなら……学校に不満があるなら、帰ってもいいんだよ?」

小野寺の方は、かなり焦っていたのだが、藤原の態度は、依然として大きい。
昨日、自分としゃべっていた人物と、今自分に重い言葉を投げ掛けている人物は、同一人物なのか、と一輝は思った。
それ程の変容ぶりである。

一輝は一拍間ひるんだが、気を取り直して、口を開く。

「……あぁ、帰りますよ」
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