恋、時々雨
なるちゃんの言葉が、嘘じゃないことくらいわかっていた。
なるちゃんはそんな人間じゃないのは、ちゃんと知ってる。
本当はあの時、なるちゃんを抱き締めたくて仕方なかった。
俺も好きだと伝えて、幸せに浸りたかった。
…昨日がタイムリミットじゃなければ。
よくある話で、事業に失敗した父親を救ったなんとかっていう会社の娘が俺を気に入った。
俗にいう『許嫁』とやらが3ヶ月前に出来たわけで。
その子とは会ったことはないものの、恋愛に特別興味もなかった俺は反論もせずなんとなく了承した。
それが、1ヶ月前になるちゃんと出会ってしまって、好きになって。
好きな人ができたから、断りたい。
そう父親に伝えたのは、先方と会う2週間前だった。