恋、時々雨
「逃げるの?」
教室の入り口。
待ち構えていたのか、それとも偶然なのか。
捕まれた右手は、熱い。
そのまま引っ張られて、人気のない西側の階段まで連れていかれる。
「…鈴木?」
「逃げんの?」
顔をあげて見つめた先には、強引なその口調とあたしを離そうとしない手とは裏腹に不安気な目をした鈴木がいた。
自分がこんな顔をさせたのかと思うとズキンと胸に痛みが走る。
「逃げない、よ。多分」
逃げる気満々だったクセに、気がつけばそう口から出ていた。
「なるちゃん」
「なに…?」
「俺、なるちゃんにそういう顔させたくていったわけじゃなかった。ごめんね」
悲しそうな顔をして、いつになく優しい口調で話す鈴木に胸が痛む。
あたしはううん、と首を横に振ることしか出来ない。