恋、時々雨
謝るのは鈴木じゃなくてあたしなのに。あたしだって、鈴木にそんな顔させたかったわけじゃない。
そう言いたかったけど、あたしが困っているのは紛れもない事実で。
何を言っても余計に傷付けるだけのような気がした。
だって、私は鈴木をそういう対象として見ていない。
「俺さ、ほんとは自信あったんだよね」
「自信って?」
「なるちゃんと両思いの」
「…、」
返答に困って黙り込めば、鈴木も困った表情を浮かべる。
「でも、その顔で答えはわかるからいらないや」
「…ごめん」
「こっちこそあんな公衆の面前でごめんね」
そう言ってあたしの手をぱっと離すと、ばいばい、と言ってあたしの前から去っていった。
いつもまたね、しか言わない鈴木にばいばいと言われたのはこれが初めてで。
ぽっかりと心に穴が開いたような気分で、簡単にはその穴は埋まらないような気がした。
そんな顔は見たくない
(いつもの笑顔が欲しいよ)