【完】最期の嘘
「あの…話って?」



一生懸命温めようとしてくれる美恵になんだか申し訳ない気がして汐は自ら話を切り出す。



美恵は、汐から手を離さないまま目線を合わせて言った。



「汐ちゃん…ホントに礼治のこと好きなんだよね…?」



質問とは裏腹に、美恵の瞳は全てを悟っているように鋭い。



汐はその美恵の瞳を直視することが出来なくて、ふっと長い睫毛を伏せた。



「やっぱり…私は、事情は知らないけど、優太さんのこと、好きなんだ。」



美恵から『優太』という単語が出ただけで、汐は動揺し更に顔を俯かせた。
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