【完】最期の嘘
優太の口角は自然と上がり、その愛しい者の場所へ、ゆっくりと歩いた。



「汐、ちゃん。」



優太が声をかけると、その不安定な程細い身体がびくりと震え、優太の方に振り返る。



「優太……さっ!」



今にも泣き出しそうなその顔を、優太は突然引き寄せて、強引に汐の唇を奪う。



勢い余り過ぎて、優太と汐の歯がガチン、と鈍い音を出してぶつかった。



「君がそうじゃなくてもいい。今更だと言われてもしょうがない。けど、俺の気持ちはもう止まらないよ、汐ちゃん…。」



優太は汐の細い身体をぎゅっと抱きしめた。



もう、汐を二度と手放さないように…。
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