【完】最期の嘘
到着した先は、優太の事務所のビル。



優太は受付の人に軽く挨拶をしてエレベーターに汐を連れ込む。



最上階まで上ったところで、更に階段を上り、屋上にまで出てしまった。



控えめなクリーム色のドレスの汐は、動きにくく上るのに体力を使い果たした。



「汐ちゃん、おいで…?」



少し先を行く優太の優しい表情に汐は、最後の力を振り絞り、差し延べられた優太の掌を掴み、屋上に到達した。



そこには、水彩絵の具で塗ったかのような茜色の空が一面広がっていた。
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