【完】最期の嘘
第二話『オーディエンス・マイ・ラバー』
大学のキャンパス内にて
汐は、携帯電話をにぎりしめて、それが鳴るのを待っていた。
「汐ー?また彼からの連絡待ってるの?」
大学での友人である紗耶香に尋ねられ、汐は不自然に作った笑顔を向ける。
汐の恋人は、高校時代からの付き合いで別々の大学に通っている。
汐は東京。彼は地元。つまり、遠距離恋愛なのだ。
離れた当初は毎日何十通と交わされたメールも、今はほとんどない。
このまま自然消滅してしまうことを、汐は半ば覚悟してはいるものの、やはり諦めきれないでいた。