【完】最期の嘘
第四話『暗い、Cry…』
都内某レコーディングスタジオにて。
「あれ?礼治、お前車は!?」
珍しくバイクでスタジオに来た礼治に、駐車場で鉢合わせになったのは『暁』のドラマーのハイジこと灰島太一。
「昨日シュガビの打ち上げで飲んだ。だから、ユータのマンションに置いたまま。」
説明不足過ぎる礼治の言葉ではあるが、二年の付き合いのハイジは何となく理解する。
「じゃあこのあと行くわけだ?」
「ん。ついでに、しーに会う。」
礼治のひそかに緩んだ顔に、ハイジは首を傾げ、ニヤリと笑う。
「ふーん。礼治にも春が来たか。」
「んー、春が来る前に、お菓子が食べたい。」
マイペースな礼治とにやけるハイジ。
会話が噛み合わないのは、彼等にとっては当たり前な日常なのだ。