彼女を愛するが故に
「あれ、ブサイクだよな。」
グラビア雑誌を見ながら、俺たちは教室で騒いでいた。
「ホント、ホント。あれで良くグラビアやってるよな。」
俺たちはゲラゲラと笑っていた。どこの学校でも見られる、ごく普通の光
景だ。
が、そこから普通じゃなくなった。
「うるさいっ!」
教室の隅にいた安田って言う奴が叫んだ。こんな事がなければ、名前なん
て一生知らなかっただろう。それくらいに地味な奴だった。
そんな奴が叫んだのだから、教室は静まりかえった。当然だろう。
けど、俺は面白くない。あの“うるさい”は明らかに俺に向けられたもの
だ。許せるはずがない。
「おい、なんだ?」
俺たちは安田を囲んだ。
「い、今、美久ちゃんの悪口言ってただろう?」
「美久ちゃん?あぁ、あのブサイクか?」
「また、言ったな!謝れ、美久ちゃんに謝れ!」
安田は激昂した。
「はぁ、知るかよ。なんで、謝んなきゃいけないんだ。ブサイクなのに、
グラビアなんかやってるから言われるんだろ?文句言われたくなきゃ、お
笑いでもやってればいいんだ。」
周りのみんなも笑っていた。
「うわわぁ!」
安田が殴りかかって来た。けど、すぐにかわした。入れ違いに、三発ほど
腹に叩き込んだ。
「くはっ。」
安田は床にへたり込んだ。
俺たちはそのまま教室を出た。もちろん、最後にもう一度安田をバカにす
るのは忘れなかった。
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