彼女を愛するが故に
流行
それからしばらくして、俺たちの中で変な遊びが流行りだした。と言って
も大した事じゃない。Wikipediaで名前を入れて検索するだけだ。
友達の名前、先生の名前、とにかく知ってる名前を片っ端から入れるの
だ。
もちろん、ほとんどヒットしない。それに入れる名前もなくなって来た。
だから、俺たちは自分たちの名前を入れて最後にする事にした。
「よっつんもないかぁ。」
俺はため息をついた。残るは俺だけだ。
「秋君くらい、あって欲しいよね?」
よっつんは言う。
「だな。」
俺は自分の名前を入れた。そして、Enterを押した。
「あ、ある。その場にいた誰もが歓喜した。」
「すげえ。秋君と同姓同名がいるよ。」
「マジ、信じらんねぇ。」
「早く読もうよ、ねっ?」
しかし、膨大な量だ。普通の記事とは量が違う。いったいどう言う人物な
のだろう?
199X年11月XX日生まれ・・・。
「マジで?誕生日も同じ?俺じゃね?」
「まさか、偶然でしょ?」
よっつんは、テーブルの上にあった煎餅を食った。それほど、深くは考え
ていない。だからだろう。
「しかし、長いね・・・。」
よっつんは飽きてきた。遂には畳の上に寝転んだ。その気持ちはわからな
いでもない。自分の事かも知れないと言う気持ちもあったが、この記事は
長過ぎる。
「もう、いいや。」
そう言い、俺も寝転んだ。なんの事はない普通の放課後に戻った。
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