ALICE-アリス-
Prologue
その日私は、葬儀場にいた。
理由は簡単だ。
私のお父さんとお母さんが死んだからだ。
―信号無視したトラックが突っ込んできたんでしょう?
―可哀相ねぇ。
誰かあの子引き取るのか しら?
まわりからはそんな声しか聞こえない。
大人達は、私を哀れむように遠巻きに見ている。
何人かの大人が、私を誘ってくれたが、私はそれを丁重にお断りした。
遺産の話しをしていないのに、誘ってくれたのは嬉しかった。
だからこそ、そんないい人達に迷惑はかけられない。
それに私は、家族との思い出が詰まったあの家を出ていくのは嫌だった。
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