ラブハンター
学校に行く前、部屋に戻って電話をかけた。



「ケントか?」

「ん」

「最近どうだ?楽しいか?」

「ん、それなりに」

「そうか。元気ならいい」



久しぶりの声。



親父より、俺を可愛がってくれたのは祖父かもしれない。



旅館を継いでほしかった祖父と、別の道を歩んだ父には、見えない壁のようなものがあった。



日本に来てからしばらく、実家の旅館で生活していた俺と父。



父がフランス料理の店を出すため、実家から今の地に引っ越した。



そして、父は店を出してから多忙。



日本になじめない俺を、父は見て見ぬふりだった。



それほど余裕がなかったんじゃないかとは思うけど、幼かった俺の唯一の救いがなくなって。



親子関係は当たり前のようにうまくいかない。



いつしか、顔を合わせてもしゃべらなくなっていた。



そんな俺によっさんが声をかけ、今ここにいる。



「じぃさん、元気か?」

「元気だ。心配されるほど歳でもない」

「ん…」

「進路は決まったか?」

「いや、まだ」

「帰って来ないか?」



やっぱり…。



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