ラブハンター
俺に抱きついて号泣する杏里を、やっぱり愛しいと思う。



泣きやんだ杏里と、杏里のアパートに帰った。



「話しなんかまとまってねぇんだけど」

「そうなの?」

「他のチームからスカウトもらって、今お世話になってる家主に話した。でも、ちょっと自信持てたから。だからやるよ、俺」

「尚道に、あたしの夢を教えてあげる」

「夢…?」

「今現在、子育てとパートでいっぱいいっぱいだけど…飲食店で働いたら、学校行かなくても調理師の資格が取れるの」

「うん…?」

「料理は好きだから、お金に余裕があれば、お店を持ちたいなって思ってる。それがあたしの夢」



初めて聞いた。



もう、食べていくだけの給料で満足してると思ってた…。



母親だし、夢なんかないんだって、勝手に決めつけて。



そうか、夢があったのか…。



「応援する」

「ありがとう」

「何か、初めて杏里の全部を見た気分…」

「尚道には相当甘えてますけど?」

「甘やかしたい、今」

「甘やかされたい…」



応援するよ、杏里。



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