ずっと大好き…この恋は秘密 …
「母さん、この子バイトしたいんだって。
オレの友達」
従業員専用の通路の一番奥の部屋に入ると
コーヒーの匂いが部屋を包んでいた。
お店のエプロンをしたままコーヒーを入れていた女の人が圭司の声に振り向く。
「こんにちわ」
優しく向けられた笑顔に
みのりもとっさに挨拶をする。
「突然すみません」
「母さん一応店長だから。
…オレの知り合いだし面接なしで雇ってくれない?」
圭司が図々しいお願いをしているのを聞いて
みのりが慌てて圭司を止めた。
「や、本当に見に来ただけだからっ…」
「え、バイトしてくれるの?!」
うれしそうな声が聞こえて
圭司の母親に目を向けると…
目をキラキラさせた母親の姿があった。
「助かるよ〜。
圭司もあまり手伝わないし次男も人見知りで使えないし…
…何ちゃん?」
「え…あ、佐倉みのりです」
「みのりちゃんね!
うちは明日からでも入って欲しいんだけど…
入れない曜日とかある?」
あまりに早すぎる展開に戸惑いつつ
それでも浅井の休みの曜日を思い出す自分がいた。
「月曜日と火曜日は…
別に絶対ダメって訳じゃないんですけど…」
「うん、了解。
じゃあ後は時間帯…
あ〜でもあたしこれから用事があって…
悪いけど圭司お願い!
あんたに任せるからっ」
店長は慌ただしく用意をして
入れたばかりのコーヒーを数口だけ飲むと
「じゃあね、みのりちゃん。
これからよろしくね」
と言い、ヒールを鳴らしながら裏口から出て行った。
「…お母さん元気な人だね」
「あぁ…家でもあの調子だから困るけどな(笑)」
みのりの頭に楽しそうな家庭が浮かぶ。
カップに半分ほど残ったコーヒーから白い湯気が上がっていた。
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