ずっと大好き…この恋は秘密 …



「…名前で呼ばないでよ」


「あ?あぁ、母さんがみのりちゃんって呼ぶからつい(笑)

…彼氏に誤解されちゃうもんなぁ」



…彼氏


なんとなくうなづけずにいたみのりに圭司が突っ込んで聞いてくる。


「彼氏だろ?

病院で彼氏だって自分で言ってたじゃん」


「うん、まぁ…

そうなんだけど」


曖昧に答えるみのりに
少しイライラした様子で圭司が口を開く。


「…なんかはっきり言えないわけでもあんの?」


まっすぐ向けられた圭司の目がみのりを見つめていて…



「別に…

ってゆうかいいじゃん。
圭司くんには関係ないしさ」


みのりは少しだけ笑って
圭司から目をそらすと
数冊の本を持って、店内に向かった。






…だって自信満々に『彼氏です』なんて言えないよ。


かと言って理由も説明できない。


説明したら多分…


浅井さんが悪者になっちゃうもん…



例え離婚するって決めていても、今の状態は世間的にはよくないし…



あたしが納得してるんだからそれでいいんだし…


『納得』…




『好きだ』とも言われてないのに…?



あたしって浅井さんにとってどんな存在なんだろ…


『彼氏』


浅井さんの言葉を信じたいけど…





会いたいよ…


浅井さん…





その日、バイトを終えると
みのりの願いが通じたように

浅井からの不在着信がケータイのランプを点滅させていた。



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