ずっと大好き…この恋は秘密 …


「浅井さん

結婚してるって本当?」


突然の清水の言葉に浅井が言葉を失った。


「他の先生から聞いちゃった〜


ちょっとショックだけど…

でも不倫も燃えるよね!」


勝手に盛り上がる清水に
浅井がため息をつく。



「…先に言っとくけど

遊びでもおまえと付き合うつもりはないから」


少し声のトーンが下がったのは…

清水の言った『不倫』という言葉のせいだった。



みのりを苦しめている二文字の言葉を他人の口から初めて聞いたが…


どう見繕ってもいいものではなかった。



「なんで〜?!

そんなに相手の女が大事なの?」



清水の問いかけに

浅井がしばらく黙って…





そして

少ししてから口の端をあげて言う。




「…すっげぇ大事」




『相手の女』




浅井が頭に浮かべたのは…


沙紀ではなく…



みのりだった。




『すっげぇ大事』


本人にすら言った事のない言葉。



まだ


言えない想い…





握った手から


抱きしめた腕から


口づけした唇から



少しでもみのりに伝わっている事を願いながら



何度も心の中で囁いた言葉…



『好き』


ではなく



『愛してる…』




自分の中にある
あまりに純粋な想いに

浅井は少し恥ずかしくなり窓の外を見た。





浅井の目に飛び込んできたのは…


圭司の本屋だった。





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