ずっと大好き…この恋は秘密 …
「浅井さん、この本屋来たことある?」
なんとなく本屋を目で追っていた浅井に清水が聞く。
「あぁ…1回だけな」
「ここね、あたしの友達も働いてるんだ〜。
でも本屋っておまけとか割引とかってしてくれないんだね。
知り合いがいるんだけどってレジで言ったのに定価で買わされたんだよ?
超むかつくっ」
清水の自分勝手な言葉に答える気にもならずに
浅井はまた窓の外に目を向ける。
「ね、浅井さんって誕生日いつ?
あたし来月の11日!
1111(笑)
すごくない?」
「…4日前」
「嘘っ!
じゃあプレゼント交換しよっか!
何がいい?」
清水の反応に面倒くさくなり
浅井が適当に答える。
「おまえに早く教習所卒業して欲しい」
嫌みのつもりで冷たく言った浅井の真意に気づく様子もなく
清水が大きな声で文句を言う。
「そんなのつまんない〜」
「つぅか、私語いい加減にしろよ」
「あ、じゃあジッポとかは?!」
『ジッポ』という言葉に
浅井が少し反応した。
「浅井さんタバコ吸うでしょ?
匂いするから分かるよ。
ジッポならずっと身につけててもらえるし
彼氏がタバコ吸う人だったら絶対あげたい感じだよね」
ウキウキした様子で声を弾ませる清水の言葉に浅井は顔を緩める。
『ずっと身につけててもらえるから』
みのりがそんな想いでジッポを選んだのかと思うと…
自然と笑みがこぼれた。
「…わりぃけど
オレ今持ってるやつ以外使わないから」
運転席から飛んでくる文句を耳障りに感じながらも
浅井の心は穏やかだった。
…会いてぇな
下を向くと目に入ってくるポケットのジッポが
浅井の気持ちをはやし立てていた。
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