ずっと大好き…この恋は秘密 …
木曜日の昼休み、浅井は沙紀に電話をした。
あの日からどうしてもみのりの笑顔が頭から離れなかった。
…あんな顔で笑われるなら
まだ泣かれたほうがいい。
今にも泣き出してしまいそうな笑顔…
不安を胸いっぱいに抱えた笑顔…
オレが見ていたいのは
佐倉のあんな顔じゃない。
初めて会った時にしていた素直な笑顔…
みのりの笑顔が…
浅井を後押しする。
その日、
沙紀が家を出てから
初めて電話をかけた。
しばらく呼び出した後
沙紀が電話に出た。
『…遼太?』
ケータイ越しに沙紀の声が聞こえる。
声の様子では元気そうに思えた。
「あぁ。
…今、大丈夫?」
浅井の深刻な声を聞いた途端に沙紀の声が変わった。
明らかに面倒くさそうな声。
『離婚届の事?
あれなら捨てちゃったけど』
「じゃあまた書くから。
明日時間ある?
…渡しに行くから」
沙紀の言葉に動揺することなく浅井が返すと
沙紀が少しむっとしたように話し出す。
『…遼太の好きな子って誰?』
「明日時間あるかって聞いてんだよ。
…それに沙紀の知らないやつだから言ってもわからないだろ」
浅井が呆れたように言うと
沙紀の口調が強いものに変わった。
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