ずっと大好き…この恋は秘密 …



昼休み、浅井は喫煙室にいた。


タバコを取り出して火をつけようとして…




手が止まる。




みのりからもらったジッポを見つめて顔を歪ませる。





…自分で決めたくせに






歯を食いしばった。






…きっと泣いてる。





みのりの泣き顔が

泣き声が…


ずっと頭から離れない。






…オレも重傷だな。






あれからみのりの事ばかりを考えてしまう自分にため息が出る。


浅井がタバコに火をつけた時、喫煙室のドアを開けて渡辺が入ってきた。


「今日から南商業の生徒が来るんだってな」


渡辺が座りながら言う。


「…そうですか」


浅井の頭にいつかのみのりの言葉が浮かぶ。







…そんな事言ってたっけ。

名字は結局教えてもらえなかったけど。


『あたしよりその子を好きになっちゃうかもしれない』

みのりの言葉に浅井の顔が緩む。




そんな自分に気づいて片手で頭を抱えた。







…やべぇ

本当に重傷だ。






「そういえばこないだの清水はなんだった?」


渡辺がニヤニヤしながら聞く。


「あぁ…

別になんでもないですよ」


冷静に答えた浅井に渡辺がため息をつく。


「おまえは本当に色恋に疎いよなぁ(笑)

モテるのにな」


浅井が苦笑いを返す。


教習所に勤め始めてから何度も告白された。


でもその度に断ってきた。











佐倉だけだったんだよ…


オレの心の中まで入ってきたのは。



多分初めて会った時から惹かれてた。



だから


佐倉の忘れ方が…

オレにはわからない。






忘れられるわけがない。






こんなに好きなんだから…










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