ずっと大好き…この恋は秘密 …



『誰とも付き合う気ないから』



浅井の言葉が頭の中で繰り返される。








…最悪


告白する前に振られるなんて…



あんな言葉を聞いた後に告白する勇気がある子なんているの?




いないよ…





振られるの覚悟してきたけど…


浅井さんから二度もあの言葉を聞く勇気は…


ない…







告白もしてないけど…




あたしは振られたんだ…










「あれ、懐かしい顔だな」


声をかけられてみのりが顔をあげると渡辺の姿があった。


「渡辺さん…」


「今日はどうした?

クリスマスだろ。

彼氏とデートしなくていいのか?(笑)」


優しい渡辺の笑顔にみのりも笑顔を返した。


「…それが振られちゃって」


それだけ答えるのがやっとだった。




それ以上言ったら…

きっと涙がこぼれると思ったから口を閉じた。




「そうかぁ…

もったいない事する男もいるんだなぁ」


渡辺の言葉にみのりが苦笑いする。


手に持っていた紙袋に気づき

みのりは少し見つめた後
その袋を渡辺に差し出した。



「ケーキなんですけど…

渡辺さん食べてくれませんか?

持って帰るのも寂しいんで…」



「…オレでいいのか?」


気を使ったように聞く渡辺にみのりは頷いた。


「ありがとな」


お礼とともに渡辺がみのりの手から紙袋を受け取る。



みのりは微笑んで会釈した後里奈の隣に戻った。



「みのり…」



全部見ていた里奈が遠慮がちに声をかける。



「…振られちゃった」




うわごとのようにそう呟いたみのりを見て

里奈は何も言わなかった。






騒がしい教習所の中で

みのりと里奈だけが口を閉じていた。









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