ずっと大好き…この恋は秘密 …



「悪いけど…

誰とも付き合う気ないから…」


浅井の言葉に目の前の女の子の表情が暗くなる。


「ごめんな。

好きなやつがいるんだ」


女の子は潤ませた瞳で笑顔を作り
会釈だけして浅井の前から走り去った。



あまりいい気分じゃないまま教習所の建物に入りその足で喫煙室に向かう。


ドアを開けると渡辺がタバコを吸いながら机にケーキを広げていた。




「…どうしたんすか?」


浅井が苦笑いしながら聞くと渡辺がタバコをくわえたまま答える。


「前ここに通ってた子にもらったんだ。


本命に振られたからもらってくれって。

さっき帰ったけど」


「へぇ…」


目の前のチョコレートケーキを見つめながら浅井がタバコに火をつける。



どうしても

以前みのりが焼いたケーキを思いだしてしまう。





懐かしいな…

ついこないだの事なのに…




「ちょうどいいから浅井もつまめよ」


渡辺にフォークを差し出されて

浅井がケーキを一口だけ口に運ぶ。








…似てるな。

確か佐倉が焼いたのも同じような味だった…



ふと、

ケーキの横に置いてあるラッピング紙とリボンが目に入った。



みのりが浅井の誕生日に焼いたケーキもきれいにラッピングされていた。


その時の飾りリボンは…

まだ捨てられずに浅井の部屋に置いてある。


女々しい自分に少しだけ笑みがこぼれる。



「いい子なんだけどな。

可愛らしくて今時の子にしてはしっかりしてたし…


…結構いけるだろ?」



渡辺の言葉に浅井は頷いた。



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