ずっと大好き…この恋は秘密 …
「別に結婚してるんだから来たっていいじゃない」
「…よくそんな事言えるな。
1年以上遊びまわっといて…
…別に沙紀を責めるつもりもないけど…
今さらだしオレにも責任があるから…
だけど…
みのりには手を出すな」
ちらっと冷めた視線を向ける浅井を沙紀が睨んだ。
そして少し笑みを浮かべる。
「…本当に何もわかってないのね。
…別に予想してたからいいけど。
とりあえず今日は顔見にきただけだからもう帰る…」
そう言って沙紀が浅井に背中を向けて歩き出す。
と、同時に教習所のベルが鳴った。
そろそろ教習生の乗ったバスが着く。
『何しにきたんだよ』
聞こうとした言葉を渋々飲み込んだ。
今まで一度も来たことなんてなかったのに…
なんで…
どうゆうつもりだ…?
「あ…あと」
20メートルほど離れたところで
沙紀が振り返る。
「このタバコ…
マズいから止めたほうがいいわよ」
沙紀はカバンから『KOOL』と書かれたタバコを取り出し振ってみせた。
「…吸うために買ったわけじゃねぇからな」
もう歩き出している沙紀の後ろ姿を見ながら浅井が呟いた。
静かな風が浅井の背中側から吹いてくる。
白い雲は重たげに一カ所に留まって動こうとしない。
…そういやこないだみのりが書いた絵結局なんだったんだろ…
確かあの雲みたいなもこもこした感じで…
目が離れてて…
口がハムスターみたいで…
みのりが砂浜に書いていたキャラクターの絵を思い出して
笑みがこぼれた。
みのりも今頃始業式か…
1つため息をついて教習所の建物中に戻った。
沙紀の意味不明な行動が
浅井の足取りを少しだけ重くしていた。
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