ずっと大好き…この恋は秘密 …






『浅井さん助けて…』








力の入らない体から涙だけが流れ落ちる。



そういえば

ずっと泣いてなかった気がする。



つらくても…

悪いのはあたしだからって




涙をこらえてた。





必死に泣かないように頑張ってた。





そっか…




だからか。





だから疲れたんだ…




無理して我慢なんかするから。





だから溢れちゃったんだ…

たまってた涙が…



涙と一緒に




たまってた不安が


不満が


罪悪感が


嫌悪感が





全部…溢れだした。





泣いても泣いても止まらなくて…

無表情の目から涙だけが流れる。





今まで

誰にも本音を言えなかった。




だってあたしが言っていいことじゃない。



浅井さんに不倫をさせてるあたしが言える事じゃない。








でも…


本当は…




『沙紀さんと話さないで』

『沙紀さんを思い出さないで』

『沙紀さんの事を名前で呼ばないで』



『早く…離婚して』


『沙紀さんと別れて
あたしだけの浅井さんになって』





あたしの頭の中は…

醜い言葉で溢れてる。



『沙紀さんさえいなければ…』



こんな事思う自分が大嫌い…



疲れたのは

浅井さんを好きでいる事にじゃない。





ひどい事ばかりを考える自分に疲れたの。



気づかれないように笑う自分に疲れたの。




『浅井さんが好きだから…
気を使わせたくなかった』



そんなの嘘。





あたしは…

気づかれたくなかったの。


沙紀さんが嫌いな自分に…





そんな自分が





卑怯で大嫌い。






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