ずっと大好き…この恋は秘密 …


赤信号が

浅井の車を止めていた。


さっきまで隣に乗っていたみのりの残り香が

浅井の鼻をくすぐる。






…わざわざ朝風呂入るなんて面倒だろ


低血圧なのに…





浅井はダッシュボードに置いてあったタバコを取り出し火を付けた。


タバコの煙が目の前の赤信号に霧をかける。






…やべぇよな。



オレ何しようとしてた…?



あの時―――…


佐倉の笑顔が…



佐倉が…

可愛く見えて…



キスしたくなった…







浅井が少ししか吸ってないタバコを灰皿に押し付けた。


そしてハンドルに顔をうずめて深いため息をつく。







『月曜なら会える』



あいつが…

すげぇいじらしいこと言うから…


つい…




緊張して頬を少し赤くしてたところとか…


うれしそうに笑うとこ…


メニューが決められないとこ…


コーヒーにミルクを入れるとこ…





全部…


全部可愛いと思った。








プーーーーーッ!!




突然後ろからクラクションを鳴らされ

浅井が信号を見上げる。


雨の中に青信号が光っていた。



「やべっ」



後ろの車にせかされながら
慌ててアクセルを踏み込む。



「…つぅかだせぇな」


少し苦笑いして

強くなる暴風雨の中で車を走らせた。







言おうとしていた『サヨナラ』が…




気持ちの奥底に沈んでいった。








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