王国ファンタジア【宝玉の民】
命題
【宝玉の民】
それは、十数年前に滅びたとされる幻の民…。
『滅びた』という表現は正しくはない。
『滅ぼされた』というのが正しい表現だろう。
その特異な体質により、人の欲望の為に散った儚い民…。
その体質とは、身体のどこかに核石と呼ばれる宝石が付いていること。
ダイヤモンド、エメラルド、サファイア、ルビー、オパール、トルマリン、ラピスラズリ―鉱石と呼ばれる様々な石がその身に宿っていたのだ。
一個体につき一種類。
手や足、背中、腹部など、ある場所や大きさは違えど、その核石が存在する。
鉱山から発掘される天然物のそれらよりも、彼等の身に宿す宝石は美しかった。
それ故、彼等は【宝玉の民】と名乗り、人々もそう呼んだ。
核石は魔力を帯び、彼等の身を守った。
そして、その核石はその者がその生涯を終えると、共に輝きを失う。
ある例外を除いては…。
その例外とは、彼等が生きたままその身体から核石を抉り取ること。
そうすれば、彼等が息絶えようとも、核石の美しさは永遠にその輝きを保つことが出来るのだ。
核石とは彼等の命そのもの。
核石を奪われれば急速にその命は尽きる。
彼等はそれをひた隠しにしてきた。
人々が、彼等の持つ核石に興味を持たぬように―その身に危険が及ばぬように。
しかし、彼等の願いとは裏腹に――どこからか情報が漏れ、その事実が人々の知るところとなった。
そして、人々は自らが持つ欲望を抑え切れはしなかったのだ…。
【宝玉の民】は狩られ、生きたまま核石を奪われ、死に絶えた。
彼等の住み処には、核石を探すために衣服を剥ぎ取られ、身体の一部を抉られた死体の山が出来上がった。
人々の欲望が、【宝玉の民】を滅ぼしたのだ。
滅びたはずの【宝玉の民】。
その中で唯一、見付からずに生き延びた者がいた。
それが、ドルメックだった。