王国ファンタジア【宝玉の民】
―動揺は隠し切れなかった。
「ダンナは、盗賊[D]でいらっしゃる。
その上、今は亡き【宝玉の民】の生き残りでもある。
そうでしょう?」
心臓が早鐘のように鳴っている。
ドルメックは今まで誰にも悟られること無く生きてきた。
滅びたとされる種族だから、気付かれる心配など殆ど無い。
それでも念には念を入れて、隠してきたつもりだった。
【宝玉の民】である処か、盗賊[D]であることすら巧妙に隠してきた。
仲間の魔石のことに関しても、情報を聞き出す時は
「魔力の籠った品の情報を」
と言って引き出すようにしていたし、実際に魔力の籠った品も盗み出していた。
魔石を盗み出した時にはわざと
「Dのやつに先を越された」
と、情報を流すようにもしている。
裏世界で暗躍していながらこんな表現も可笑しいが、
『表向きは、値の張る魔力の籠った品狙いの盗賊』
で通してきたはずだった。
(…どこで気付かれた?)
ドルメックは急いで思考を巡らせた。
思えば、約2年。
この近隣で一番早く確かな情報を提供してくれると判断し、この男を情報源として仕事をしてきた。
他の情報屋もたまには利用したが、やはりトールの情報が一番正確だった。
別段親しくしていた訳ではなかったが、それなりに話をする機会もあった。
(それでも、俺の正体が解るような話、した覚えはないぞ?!)