王国ファンタジア【宝玉の民】



―動揺は隠し切れなかった。



「ダンナは、盗賊[D]でいらっしゃる。
その上、今は亡き【宝玉の民】の生き残りでもある。

そうでしょう?」


心臓が早鐘のように鳴っている。



ドルメックは今まで誰にも悟られること無く生きてきた。

滅びたとされる種族だから、気付かれる心配など殆ど無い。
それでも念には念を入れて、隠してきたつもりだった。


【宝玉の民】である処か、盗賊[D]であることすら巧妙に隠してきた。


仲間の魔石のことに関しても、情報を聞き出す時は

「魔力の籠った品の情報を」

と言って引き出すようにしていたし、実際に魔力の籠った品も盗み出していた。

魔石を盗み出した時にはわざと

「Dのやつに先を越された」

と、情報を流すようにもしている。



裏世界で暗躍していながらこんな表現も可笑しいが、

『表向きは、値の張る魔力の籠った品狙いの盗賊』

で通してきたはずだった。



(…どこで気付かれた?)



ドルメックは急いで思考を巡らせた。


思えば、約2年。
この近隣で一番早く確かな情報を提供してくれると判断し、この男を情報源として仕事をしてきた。

他の情報屋もたまには利用したが、やはりトールの情報が一番正確だった。


別段親しくしていた訳ではなかったが、それなりに話をする機会もあった。




(それでも、俺の正体が解るような話、した覚えはないぞ?!)




< 10 / 45 >

この作品をシェア

pagetop