王国ファンタジア【宝玉の民】
ドルメックは胸元に突き付けられた指―その手を掴み、引き倒した。
そのまま隠し持っていた小型のナイフを喉元に突き付ける。
ぎりぎりまで顔を近付け、低い声で問い質す。
「……いつ、気付いた?
…誰かに俺の情報を流したのか?」
事と次第によっては、生かしておく気はない。
暖かい陽気のはずなのに、この一帯だけ空気が凍り付くかのように冷たくなった。
トールは情けない顔で訴えてきた。
「話します!ちゃんと話しますよぅ〜。
アタシはダンナの味方です。誰にも話していませんよ〜!」
ドルメックは未だナイフを喉元に突き付けたまま、訝しげにトールを睨む。
今にも泣きそうな声でトールはそれに…と付け加えた。
「この体勢は頂けません。
この状態じゃぁ、端から見たらアタシ等怪し過ぎますよぉ〜」
(この状況で何を言い出すかと思えば…)
多少の苛立ちは感じたものの、馬鹿馬鹿しくなってトールを解放してやった。
トールは安堵の溜息を吐き、喉元を擦っている。
ドルメックはナイフを収め、改めてトールに疑問を投げ掛けた。
「……で?いつ、気付いたんだ?」