王国ファンタジア【宝玉の民】
トールは今一度座り直し、手振りでドルメックにも隣に座るように促す。
軽く肩を竦めて愚痴るように言った。
「ダンナは気が短くていらっしゃる」
ドルメックも促されるままに座り直し、まだ血の気の戻らない冷えきった指先を擦り合わせた。
横目で睨み付け、苛立ちを隠しもせず言い放った。
「…誰にも知られるはずの無い、自分の生き方の根源とも言えるもの。
それを知られることで自身の命が危険に晒されるほどの秘密を、よりにもよって情報屋に握られていたんだ。
警戒して当然だろう」
ドルメックは、細心の注意を払っていたつもりだったのだ。
誰にも深入りせず、深入りさせず――昼間は気儘な旅人を、夜中はしがない盗賊を――完璧に演じていたはずである。
やはり、どこまで記憶を遡っても、何が原因でばれたのかが分からない。
思い詰めた様子のドルメックの肩に手を乗せ、申し訳なさそうにトールが言った。
「アタシの聞き方も良くなかったですねぇ〜。
すみません、アタシも確信があった訳じゃなかったんですよぉ〜。
ただ、本当にそうなら――今の状況をきちんとお伝えしなきゃと思いましてねぇ」
最初から、順を追って説明しますよ。
そう言ってトールは話始めた。