王国ファンタジア【宝玉の民】
「ここまでの説明で分かると思いますが…。
これでアタシの中で、
【宝玉の民】=ドルメックのダンナ=盗賊[D]
っていう方程式が出来上がったわけです」
それでも確信は持てなかったが、この方程式が正しければトールの疑問全てに辻褄が合う。
―鮮やかな赤い右目に宿る魔力は【宝玉の民】の核石だから。
―魔力を感じれないのに[民の雫]を見分ける自信があるのは【宝玉の民】だから。
―盗賊[D]であることを隠すのは【宝玉の民】と勘繰られ、狩られることを恐れたから。
―気さくなように見せて誰に対しても一線を引いているのは、自分以外誰も信じていないから。
とりあえず、これで疑問の内の二つは解消された。
「なんで、俺の情報を売らなかった?
確信が無くてもかなりいい値になっただろう」
トールは苦笑した。
ドルメックらしい、人を信用していないからこその発言だ。
「ダンナの秘密ばっかり暴いているのもなんですし、ちょっとアタシの昔話でもしましょうかねぇ〜?」
ドルメックが訝しげな顔になる。
今、そんな話してなんの意味があるのかとでも言いたげだ。
「アタシもダンナと一緒なんですよねぇ…。
これも飯のタネなんで、詳細は明かしませんが…。
アタシもとある種族の末裔ってやつなんですよぉ」
そう言って簡単に説明した。
数十年前に疫病で滅びた種族の末裔であること。
普通の人間と交わることで血が薄まり、もう殆どその能力を発揮出来ないこと。
かろうじて残っている能力が[魔力を感じ取ることが出来る]ということ。
仲間のいない心細さを感じていたこと。
情報屋になった理由も、自分の種族がどこでどんな生活をしていたのか知るにはこの上無い職業だったから。
「つまり、ダンナにとっては迷惑な話かもしれませんがね、
アタシはダンナに親近感を持った訳なんです。
そんな相手の情報売る訳無いでしょ〜?」