王国ファンタジア【宝玉の民】
また暫く、沈黙が流れた。
自分の命に替えても仲間の核石を集めると誓ったのだ。
悩むまでもなく、取るべき行動は決まっている。
「王都へ向かう…準備をしなきゃな…」
ドルメックは、深い溜息と共に言葉を吐き出した。
それを聞いたトールは、ドルメックに詰め寄る。
「王都へ行って、お仲間の核石を使って戦う気ですか?
いつ砕けてしまうとも知れないのに?
集めても砕けてしまったら本末転倒ですよぉ?」
ドルメックはトールに決意を込めた眼差しで答えた。
「それなら、仲間の石を使わずに戦えばいい。
俺自身の核石の力で戦えば、一つも欠かすことなく約半分の核石を取り戻せる」
強い意志を帯びた瞳だった。
トールは思わず息を飲む。
しかし、ドルメックの言った内容は自殺行為に等しい。
確かに、【宝玉の民】は自分の身に危険が迫った時、核石の魔力を使い身を守った。
多少疲労するものの、核石が砕けたりすることはない。
だが、それはあくまでも防御に力を使うからである。
攻撃の為に魔力を引き出すとなると話は全然変わってくる。
防御の時よりも攻撃に力を使う方が、より多くの魔力を消費する。
核石も、自分自身の身体に宿っている分、身体に掛かる負荷が大きい。
そして何より、魔力が尽きれば[民の雫]と同じように核石は砕け散る。
―それが意味するのは『死』だ―
「ダンナは、自分が何を言っているのか分かってらっしゃいますか?
ダンナが死んでしまったら誰がお仲間の核石を――「俺は死なない!」
トールの言葉を遮り、ドルメックは言った。
「――いや、違うな。
俺は『死ねない』
仲間の核石を皆の墓前に添えるまでは、な。
仲間の核石も俺は使えない。
[民の雫]は俺にとって仲間の命そのものだから。
皆の命とも言える核石を取り返すこと…。
それが俺の願いであり、命に替えても果たさなければならない使命だと思ってる。
だったら、俺自身の力で戦うしかないだろう?」
自嘲気味に、ちゃんと分かっているよと笑った。