王国ファンタジア【宝玉の民】
日が傾き、風が冷たくなってきた。
思った以上に話し込んでいたらしい。
今日の真っ当なお仕事がまだ残っている。
急がなければ間に合わなそうだ。
「情報屋、この話はまた後でだ。
俺は飯食って残りの配達済ませなきゃなんないからな。
今夜、あの日行った酒場で落ち合おう」
ドルメックは[昼の顔]でトールに言った。
言いたいことは山程あったが、ひとまずはその言葉に従い退散することにした。
肩を落とし心配そうにチラチラと振り返りながら丘を下るトールに対し、サッサと行けとばかりに手を払うドルメック。
トールが見えなくなってからマーリィに貰った包みを開く。
マーリィの作る料理はいつも美味しく、目の前のサンドイッチも良い匂いが鼻をくすぐる。
いつものように美味しく頂くつもりだったのだが…。
苦い思いと一緒に飲み下した所為か、味がよく分からなかった。
かなり遅い昼食を摂ると、恐らく最後になるであろう仕事を片付けに掛かった。