王国ファンタジア【宝玉の民】
マーリィが進み出て、少し寂しそうに微笑む。
「まさかこんなに急に居なくなっちまうなんてねぇ。
寂しくなるよ…。
いつでも戻っといで?
また雇ってあげるからさ!」
そう言って肩を叩かれた。
カッツェはいつもの仏頂面で革の小袋を差し出した。
受け取って見てみると、中身はお金だった。
驚いてカッツェを見上げる。
「旅に出るなら色々入り用だろう。
大した額じゃないが、足しにするといい。
全く、お前が居なくなるから仕事が大変だ。
準備があるから早く行け!」
それだけ言うと奥に引っ込んでしまった。
ドルメックは何だか申し訳ない気分だった。
凹んでいると、マーリィがクスクス笑っている。
「あの人、あんなこと言って本当は凄く寂しいのよ?
昨日だって、最後の晩だってのに夕飯は外に食いに行くのか…ってイジけてたもの♪」
思わず目を見開く。
(そんなことがあったのか)
「急に辞めてしまってすみません。
本当にお世話になりました」
感謝の意を込めて深々と一礼した。
それじゃあ行きますと、扉に手をかけるとマーリィに呼び止められた。
「あぁ、お待ちよ。
これ、持ってお行き!」
そう言って手渡してきたのは、包みに入ったサンドイッチ。
途中で食べなと笑うマーリィを見て、胸が一杯になった。
「本当に、ありがとうございました…」
今度こそ、きちんと味わって食べようと思いながら扉を開ける。
日差しが眩しくて、視界が滲んだ。