王国ファンタジア【宝玉の民】
力の解放と王への謁見
予想通り、二、三日目迄は順調に進行して行った。
そして四日目――。
まさに今、森の中に足を踏み入れようとしていた。
しかしどういう訳か、すっかり旅の相棒になった葦毛が森に入ろうとしない。
前に進もうとすると興奮したように嘶き、後退りするのだ。
動物としての本能が働いているのかもしれない。
だが、このまま立ち往生する訳にもいかない。
なんとか葦毛の興奮を鎮めて森に足を踏み入れた。
中に入ってみると、成程…と納得した。
森の中は異様な空気が立ち込めている。
(これは、気を引き締めて行かないと本気でヤバそうだな)
鬱蒼と茂る森を眺め、慎重に馬を走らせる。
広葉樹の森は日差しを遮り、薄気味悪く薄暗い。
その為地面は湿り気を帯び、少し肌寒い感じがする。
鳥や虫の鳴き声が煩い程に響く。
この状態で周りの気配を探るのは難しいだろう。
こういう時、一人旅は不便だ。
交代で休んだり出来ず、常に気を張っていることになる。
この森を抜ける迄は日中に進み、夕方頃に仮眠を取り、夜は火を焚き夜行性の生き物に備える。
まともに休息を取れないような、そんな生活を続けなければならない。