王国ファンタジア【宝玉の民】
霞む視界に、〔Gスネーク〕の顔が近付く。
獲物の最後を間近で見届けたいのかもしれない。
苛立たし気に睨み付けた先には、ナイフの突き刺さったままの眼球。
認識すると同時に身体が動いていた。
目の前のナイフを引っ掴み、捻りながら更に奥まで押し込んだ。
突然の反撃と痛みに、締め上げる力が緩む。
その隙に、右目の核石に意識を集中し魔力の解放を促す。
産まれて初めての魔力の解放。
上手く制御出来る自信なんて無い。
それでも、やるしかなかった。
身体の奥底から膨れ上がる巨大な力に身体が震える。
ドクドクとやけに大きく聞こえる自分の鼓動と耳鳴り。
身体の芯と右目が燃えるように熱い。
「……〜っあああぁっ!」
溢れ出す魔力のエネルギーを、ドルメックは上手く抑え切れなかった。
辺りに、眩い閃光と轟音が迸る。
気が付けば、ドルメックは膝を付いてへたり込んでいた。
酷く息苦しく、身体は鉛のように重い。
頭と右目に、鈍い痛みが残っている。
右頬を何かが伝った。
手で拭うと、それは血だった。
持っていたナイフの刀身で右目を映し出す。
白目の部分が真っ赤に充血し、血涙を流している。
身体の中でも、眼球は弱い部分である。
もしかしたら、核石を使うことで受ける衝撃が、予想外に大きいのかもしれない。
落ち着いて辺りに目を向けると、衝撃的な光景が拡がっていた。
ドルメックを中心に、〔Gスネーク〕の物と思われる赤紫色の鮮血や、赤黒い肉片が飛び散っていた。
魔力の解放の衝撃で抉れた地面は勿論、爆風で薙ぎ倒された樹木にも生臭い血肉がこびり付いている。
見るも無惨な、さながら地獄絵図のようなエグい光景だった。
今更ながら、自分の能力に戦慄を抱く。