王国ファンタジア【宝玉の民】



霞む視界に、〔Gスネーク〕の顔が近付く。

獲物の最後を間近で見届けたいのかもしれない。


苛立たし気に睨み付けた先には、ナイフの突き刺さったままの眼球。

認識すると同時に身体が動いていた。


目の前のナイフを引っ掴み、捻りながら更に奥まで押し込んだ。

突然の反撃と痛みに、締め上げる力が緩む。



その隙に、右目の核石に意識を集中し魔力の解放を促す。

産まれて初めての魔力の解放。
上手く制御出来る自信なんて無い。
それでも、やるしかなかった。



身体の奥底から膨れ上がる巨大な力に身体が震える。

ドクドクとやけに大きく聞こえる自分の鼓動と耳鳴り。

身体の芯と右目が燃えるように熱い。





「……〜っあああぁっ!」





溢れ出す魔力のエネルギーを、ドルメックは上手く抑え切れなかった。


辺りに、眩い閃光と轟音が迸る。




気が付けば、ドルメックは膝を付いてへたり込んでいた。

酷く息苦しく、身体は鉛のように重い。
頭と右目に、鈍い痛みが残っている。

右頬を何かが伝った。
手で拭うと、それは血だった。

持っていたナイフの刀身で右目を映し出す。

白目の部分が真っ赤に充血し、血涙を流している。

身体の中でも、眼球は弱い部分である。
もしかしたら、核石を使うことで受ける衝撃が、予想外に大きいのかもしれない。



落ち着いて辺りに目を向けると、衝撃的な光景が拡がっていた。



ドルメックを中心に、〔Gスネーク〕の物と思われる赤紫色の鮮血や、赤黒い肉片が飛び散っていた。

魔力の解放の衝撃で抉れた地面は勿論、爆風で薙ぎ倒された樹木にも生臭い血肉がこびり付いている。

見るも無惨な、さながら地獄絵図のようなエグい光景だった。


今更ながら、自分の能力に戦慄を抱く。




< 36 / 45 >

この作品をシェア

pagetop