王国ファンタジア【宝玉の民】
丸々一日休息の為に費やし、体力を回復させた。
この頃にはドルメックの右目も元通りに治っていた。
ここからは、大きな街道を真っ直ぐ辿って行けば二日程で王都に着く。
葦毛の世話を頼んでいた馬小屋に引き取りに向かう。
たっぷりと飼い葉を貰い、マッサージとブラッシングを受けた葦毛は上機嫌そうだった。
「王都まで、もう少しの間付き合ってくれよ、相棒」
その呟きを聞いた世話役の男がドルメックに話し掛けてきた。
「知らないのかい?
王都はドラゴンの被害でめちゃくちゃなんだ。
厳戒体制がしかれて、物資供給か、討伐部隊に召集された戦士達しか通行許可が降りないらしい」
一般人が立ち入るのは無理なんだよ、と言った。
葦毛を撫でたまま、ニヤリと笑う。
「…だから、行くのさ。
王国からの熱烈ラブコールが届いたからな」
ドルメックの言葉に、その男は驚きを隠せなかった。
「あんた、討伐部隊に召集された戦士だったのか!
わかってたらちゃんともてなしたのに!
…じゃあ、王国からの召集令状を持ってるのかい?」
男は目を輝かせて聞いてくる。
救世主や正義の味方と勘違いしているのかもしれない。
ドルメックの抱いている物は、そんなにお綺麗な感情ではなかった。
仲間を盾に捕られた怒り、
そしてその仲間を助ける為。
自分の為の戦いに、在らぬ期待をして貰ってはやり難い。
「俺はちょっと特殊でね…。
令状は持ってない。
ただ、俺の仲間が王都で世話になってるらしくてね。
そしたら、行かない訳にはいかないだろ?」
そんな説明で、それなりに納得したらしい男は激励の言葉を述べて去って行った。
複雑な気持ちになりながら、ドルメックは王都までの残りの道を葦毛と共に駆け抜けた。