王国ファンタジア【宝玉の民】
王都はもう眼前に迫っていた。
そびえ立つ豪奢な城と、城下町の外壁が見て取れる。
ここから見る限りでは、特に被害がある様には見えない。
仲間の核石と、
王都を震撼させたドラゴンと、
感慨深い対面の刻が迫る…。
――が、その前に。
王都までの道のりの、恐らく最後になるであろう関門が見えてきた。
近付くにつれ、町から憔悴し切った様子で歩いてくる人々の数が増えている。
この人々は、王都から避難してきた者達なのだろう。
関門の前に着く。
ドルメックは手綱を引き、葦毛を止めてヒラリと飛び降りた。
そこには物々しいバリケードと、ピリピリと神経を張り積めさせた警衛兵。
『ドラゴンの被害を最小限に抑える為、ここから先は許可の無い者の立ち入りは禁止されている。
即刻立ち去るが良い!』
お決まりの台詞なのか、息もピッタリに二人の兵が言った。
見た所、かなり若い。
少年と言ってもいいかもしれない。
(志願兵か、それとも徴兵令でも出てるのか―)
どちらにしろ、余り感心は出来なかった。
溜息混じりに二人に告げる。
「許可なら降りてる。
不本意ながらドラゴン討伐部隊の召集に応じて来てやったんだ。
あんた等の親玉に取り次いでくれ」
「っ!貴様、なんて口の聞き方をっ」
片方の兵がカッとなったのを、もう一人が止めた。
「失礼致しました。
それでは召集令状を拝見させて頂きます。
取り次ぎはそれからです」
こちらも、冷静かと思いきや、静かな怒りを滲ませている。
「生憎、俺は令状なんて持ち合わせていない」
ドルメックは肩を竦めた。
警衛兵二人は、持っていた槍を交差させる。
「それでは、通す訳には参りません。
お引き取りを…」
ドルメックは頭を掻き、面倒臭そうに続けた。
苛立たし気に睨み付ける。
「俺はちょっと特殊でね…。
殆ど脅迫紛いの召集が、腹に据えかねているんだ。
【宝玉の民】の最後の生き残りが仲間を取り返しに来たと、サッサと伝えろ」
身も凍るような、突き刺さるような視線だった。
尻込みした警衛兵は身を翻し、取り次ぎに向かった。