王国ファンタジア【宝玉の民】
それから程無くして、謁見の間とやらに通された。
赤い絨毯に、天井を飾る美しいシャンデリア、そこかしこに飾られている絵画や美術品の数々。
部屋の両脇には、等間隔で警衛兵が並ぶ。
目の前の雛壇には、今のところ主不在の豪華な椅子。
ドルメックが【宝玉の民】ではなく、
[民の雫]を盾に捕られていなければ、
王への謁見とは、恐悦至極と言っていいものだろう。
しかし、ドルメックにしてみれば仲間を人質にしている悪の親玉とのご対面でしかない。
いくら最高権力者が相手でも、
豪華絢爛な城に招かれても、
ドルメックの心の琴線には微塵も触れない。
「国王陛下、御入室です」
仰々しい台詞で、部屋の全ての者が膝を折る。
ただ一人、ドルメックだけは膝を折らなかった。
正直、馬鹿らしくてやっていられない。
(血筋の上に胡座をかいて安寧とした暮らしを送る奴の何が偉い?)
国王がゆっくりと椅子に腰掛ける。
金糸、銀糸で刺繍をあしらった上質な衣装。
その上にマントを羽織り、顔は頭上に頂いた装飾品から垂れる布で隠れている。
王と共に現れた宰相らしき人物がたしなめてきた。
「陛下の御前である。控えよ」
「脅迫紛いに人を呼び付けた上に、これから命懸けで戦う者に対して顔も見せずに高い位置から見下してるような奴に下げる頭は持ち合わせて無い」
ドルメックの痛烈な物言いに室内がどよめく。